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大阪高等裁判所 昭和58年(ネ)1736号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一請求原因第一項について

<証拠>によれば次の事実を認めることができ、これに反する証拠はない。

1 控訴人はレコード音楽の作詩家であり、演歌については作曲家でもあつて、劇団松竹新喜劇の座長で俳優の藤山寛美と親しい間柄にある。

被控訴人はレコード及び録音録画テープの製造、販売等を営業目的とする会社である。

2 被控訴人は、同業者キングレコードが昭和四九年に控訴人の協力を得て、藤山寛美主演の喜劇をレコードにして、同俳優の実演を見なくてもその喜劇を楽しめるレコードの制作販売をしていたところから、被控訴人においても同俳優主演の松竹新喜劇のレコードを制作販売することになり、同俳優と親しくかつ右レコード化に実績のあつた控訴人にその協力を求めた。控訴人は同俳優の了解を取つて、右レコード化の制作販売に協力することに同意したので、昭和五〇年五月二一日控訴人と被控訴人との間で左記のとおり、「制作協力に関する覚書」と題する契約を文書により締結した。

(一) 控訴人は藤山寛美主演の松竹新喜劇「あほほんシリーズ」の制作に協力し、この録音物の販売につき積極的な促進活動をする。

(二) 被控訴人は、控訴人の右制作協力等に対する謝礼として、控訴人の希望する印税方式(売上の百分比により報酬額を決する方式)により、次の制作協力印税を支払う。

(1) 三〇センチLPレコード一種類につき販売数量三〇〇〇枚を超えたとき、三〇〇一枚目から一枚あたり六〇円

(2) 録音テープ一種類につき一本目から一本につき六〇円等

(三) 被控訴人は控訴人に対し、三〇センチLPレコード一種類につき三〇〇〇枚分の印税(一八万円)を前払いすることとし、その一〇種類相当額一八〇万円を、昭和五〇年五月及び同年一〇月の二回に分けて各九〇万円を支払う。

以上

被控訴人は右約定により控訴人に対し、同年五月と一一月に前払印税各九〇万円を支払つた。

3 ところで、藤山寛美主演の喜劇を三〇センチLPレコードに収録するためには、演劇時間を一時間位に収める必要があり、そのため一時間を超える演劇についてはどの部分を省略するかにつき、控訴人は松竹新喜劇の座長で主演の藤山寛美の意見を求め、演劇の良さを維持しながら約一時間に収めるようにして被控訴人に協力した。また演劇を耳で聞いただけでも判るようにするため、控訴人は同俳優の了解のもとに、脚本にはない台詞を入れ、舞台の場景や仕草を分り易く説明する対話を加えたりした。このように控訴人は同俳優主演の喜劇の録音ができるようになるまでの準備行為につき、同俳優と折衝して被控訴人に協力した。そして右喜劇を録音してレコードの原盤(音を最初に固定した機器もしくはその複製物を製造する目的で音を収録した機器をいう)の制作を担当したのは、松竹株式会社の子会社である株式会社中央音楽出版であつたが、同社は機械を持ち込んで録音するだけだつたので、実況録音の際、控訴人は被控訴人のディレクターらとともに各劇場に立会し、右録音に協力した。

被控訴人は中央音楽出版から右原盤の独占的な使用権を取得してこれを複製し、また控訴人の協力を得てレコードのジャケットを作り、昭和五一年七月から昭和五四年七月の廃盤されるまでの間、松竹新喜劇「あほほんシリーズ」(販売のときは「藤山寛美爆笑シリーズ」と改められた)のレコード一〇種類を逐次発売した。右レコードのジャケット及び宣伝パンフレットには企画者として控訴人の名前が入れられた。

しかし、右レコードの一種類の平均販売数量はわずかに八四枚にしかすぎなかつた。

以上の事実が認められる。(もつとも右のうちの一部は当事者間に争いがない。)

右認定事実によれば、控訴人は被控訴人が藤山寛美主演の喜劇をレコードにして販売するにつき、その制作販売に協力して右レコードの企画者の地位を得たこと(右制作販売協力行為と別個に右レコードの企画行為があつたとは解せられない)、その制作協力行為の謝礼として被控訴人から制作協力印税の支払を受ける約定をして、その前払金一八〇万円を受領したことが明らかである。

しかしながら、「控訴人の右制作協力行為に対し、右謝礼とは別に企画料名目で四〇〇万円を支払う旨の口頭による契約が、右謝礼約束の一か月位前に、被控訴人の永野制作本部長と控訴人との間に締結された、企画料の使途は諸雑費になる」旨の、原・当審の控訴人の供述は、原審証人波多一索の証言に照らし採用できない。

他に企画料四〇〇万円の支払約定を認めるに足りる証拠はない。

(乾達彦 緒賀恒雄 馬渕勉)

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